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満天の星 番外編 ~妹、梨華の恋~   二十歳

Author: 紅城真琴
last update Huling Na-update: 2025-07-14 18:18:54

2年後。

私は二十歳になった。

お姉ちゃんも無事大学を終え、春には帰ってくる予定。

「樹里亜、病院への挨拶は済ませたの?」

母さんが心配そうに声をかける。

「昨日行ってきた」

「お姉ちゃん、引っ越しはいつ?それまでに部屋の私物を片付けるけれど」

「うんん。まだいいわ」

ん?

「そんなに荷物も多くないし、急がなくて大丈夫」

「ふーん」

「樹里亜、本当に救命に行くのか?」

「うん」

兄さんはとても心配そう。

まあね、どう見てもお姉ちゃんには小児科か皮膚科が似合う。

救命でバリバリってイメージじゃないのに

「大丈夫よ」

みんなの心配を察してお姉ちゃんは強がってみせた。

「やってみてダメなら変わればいいだろう」

父さんはいつもお姉ちゃんに甘い。

「私だって一応医者だから、救急で頑張るわよ」

と、ぷっと頬を膨らませてお姉ちゃんが笑った。

何だろう、明るすぎる。

不安を感じながらも、私は家族みんなが上機嫌なことを喜んだ。

数ヶ月後に嵐を迎えるとも知らず。

春。

医大を卒業し、うちの病院へ採用になったお姉ちゃん。

でも・・・

家には帰ってこなかった。

自分で勝手にマンションを借りて、2月のうちに引っ越しを済ませてしまった。

家族が気付いたときには引っ越しが終わり、荷物も片付けられていた。

もちろん、父さんもお兄さんも怒った。

本当に鬼のような形相で怒鳴った。

でもお姉ちゃんが引かない。

何度も言い争いをしてもめ続けたけれど、結局はお姉ちゃんの勝ち。

あんなに気合いを入れてお姉ちゃんの帰りを待っていた私は気が抜けてしまった。

と言うより、無性に腹が立った。

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